念願叶って手に入れたRRLの2ndデニムジャケット。
ずっと欲しいと思いながら何年も後回しになっていたのですが、RRLも近年縮小方向にあることや、USA製デニム工場の閉鎖、生産地がメキシコや中国に移っているものがちらほら目につく様になったことも気になっていました。
こだわり満載であったRRLのデニムがでいつまでも手に入るとは限らないとようやく動き出したが時すでに遅し。
ただでさえ個体数の少ないRRLの2ndデニムジャケットですが生地やら生産国も加味して古着で好みの新古品リジッドを探すのはなかなか大変です。
それがようやく手に入ったのですがよくよく見ると背面下段のプリーツが左右非対称。
デニムでなければそのうち修理で良かったのですが、色落ちやアタリが着いてしまってからでは手遅れです。
行ける範囲でリペアショップを探すもチェーンステッチでウェストを修理してくれる場所が近所に見当たりません。
遠方であればいくつかありましたが送料もあるし見積もり連絡も面倒、と言うよりようやく購入したジャケットが訳ありのショックで即修理に動き出す気になれませんでした。
しばらく放置した後、状態確認。
プリーツを直すのかかるステッチは僅か数ステッチ分、であれば自分で直しても良いのではと思う様になりました。
うまく行けば今後の修理にも応用できるので、DIYでチェーンステッチに挑戦しました。
結果はこちら。
問題のRRL デニムジャケット
ご覧の様に腰のプリーツが片方は外開き、片方は内開きです。
これまでにUSA製品でRRL以外にも何度か体験してます。
アメリカンクオリティですね。
リペアの道具
フジックス ジーンズステッチ
糸にも種類がありますが、ジーンズステッチと命名されたこの糸は色味も太さも風合いも通常のジーンズ用そのままです。
縫製修理を自分でもよく行いますが、一番気になるのはステッチの乱れよりも糸の種類や色味の違いです。
シングルステッチなら誰でも縫えるのでジーンズステッチは一家に一つ常備しておく価値ある品です。
ミシン針
手縫いですが今回はミシン針を使います。
これがチェーンステッチには最適です。
デザインナイフ
カッターナイフではなくデザインナイフです。カッターでも細身のものなら良いとは思いますが切れ味が悪いと糸だけで無く生地を切ってしまうことがあります。
デザインナイフも一家に一つあると便利です。
リペアの開始
ステッチを切ってほどきます。
プリーツにかかっている部位は3、4ステッチほどですが逆向きに折り返すのでギリギリで8ステッチほど必要です。
チェーンステッチはチェーンの輪を片側に通して縫っていくため向きを間違えて切ってしまうと糸が全て解けてしまいます。
⊃⊃⊃⊃⊃⊃⊃⊃⊃ ←この向きの場合は切った場所の左側の糸を引っ張るとチェーンの輪が隣の輪から抜けて糸が全て解けていきます。右側は引っ張ってもチェーンの輪が絞まる方向に糸が引かれるため抜けません。
生地を切らない様に糸だけを切ります。
しっかりと縫われた糸は生地から浮いていないため切り始めは特に慎重にやらないと生地も切ってしまいます。
なかなか糸がきれず力を入れすぎて生地を切ってしまった失敗は何度も経験しています。デニムであれば問題ありませんが他の生地だと針穴が少し大きくなた程度の傷でも結構目立ちます。
この時点ですでにミスをしてしまいました。
裏から見ると内向きプリーツですが表から見ると正常な外向きプリーツなので正常な方を切ってしまいました。
何か考え事をしていたのか考えすぎていたのか気づいた時には計画全てが無駄になる大失敗です。
元々労働着のデニムですから片側8ステッチ程度のハンドリペアなら大したことは無いと想定していたのですが、左右対称にプリーツ部分にかかるハンドリペアは目立つこと間違いなしです。
いつかはショップ修理が確定してしまったのですがとりあえず作業は進めることにしました。
プリーツの向きだけで無くプリーツの位置も気になっていたのでどうせならと直すことにしました。
元の状態だと腰の外側ボタンの真上にプリーツが来ていますが、他の個体のほとんどはボタンよりも内側にプリーツがあります。
さらにリーバイスやレプリカメーカーになると、上下のプリーツの位置が揃っています。
RRLはレプリカではなく当時のディテールをサンプリングしてデザインしたものですので、ここはRRL仕様にしました。
上下のプリーツを揃えてしまうと若干下の幅が狭い様にも感じました。
修理結果がこちらです。ジーンズステッチのおかげで表から見るとそこまで気になりません。
プリーツの折り幅や角度を維持しながら縫うのが大変でした。
生地が厚いので表裏の生地に対して垂直になるように気をつけて針を入れていきます。
元糸が太いのでオリジナルの針穴を拾いやすいことも今回自分で修理しようとした理由でした。
しかしプリーツを意識しすぎて少しステッチの向きに乱れがでてしまいました。
裏から見ると表よりもステッチの乱れが目立ちます。
生地や糸が収縮して馴染んでいけば多少は増しになるのではと期待しています。
ミシン針を使った理由ですがチェーンステッチは一回通した糸を同じ穴に通して、”⊃”の様な輪を作る必要があるからです。
手縫い針で全く同じ穴に針を通すことは不可能であることと、厚い生地とプリーツを正しく押さえながら垂直に針をいれるのはミシン針の方が都合が良いと思ったからです。
この目論見はうまくいきました。
修理完了
とりあえずは普通に着れる状態になりました。
今後はハンド修理した部位だけを繋ぐのでは無くチェーンステッチのステッチ一本縫いを安価で頼めるショップを早々に見つけなければなりません。
話題になるからとチェーンステッチミシンを導入して宣伝していたとしても糸の種類やプリーツの深さや角度を綺麗に修理できるかどうかは経験とセンスが必要です。
これまで何度も修理屋のイマイチを味わって何店舗も探し回った経験があるので新しい店を探すのは気が重いです。
春が来てTシャツ一枚で着れるくらいの季節が来る前には修理したいと思います。