ジョンロブを代表するモデルの一つダブルモンクのウィリアムです。
ジョンロブはあまりにもモデル数が多いので同じモデルは二つ持たないと決めていたのですが我慢できず破ってしまったのがウィリアムです。
素材、色、靴底、とバリエーションが豊富なのですがどれもしっくりくるのがウィリアムの魅力です。
ジョンロブには多種多様なダブルモンクがあるのですが結局はウィリアムに戻ってきてしまう完成度の高さがあります。
30年、親子ほど年の差がある新旧ウィリアムの比較です。
ダブルモンクの歴史
1945年、ジョン ロブ パリの当時の責任者ウィリアム ロブが、ウィンザー公こと英国王エドワード8世のために製作した靴こそがダブルモンクの起源です。
飛行士の靴アビエイターブーツをヒントに、甲にバックル付きのストラップ2本を配置した、今でも革新的だと思わせるデザインをエレガントにバランスさせた逸品です。
紳士靴の原点が現存しているということもジョンロブが讃えられ一目置かれる理由の一つと成り得るのでは無いでしょうか。
ジョンロブ ウィリアムの歴史
ビスポークとして製作したダブルモンクをジョンロブ パリでは1982年に市販化したものが、製作者ウィリアム ロブの名前に由来する「ウィリアム」です。
兄弟モデルとして、シングルソールの「ウォレス」があります。
ウィリアムウォレスという英国王エドワード1世と戦ったスコットランドの英雄の名を冠したモデルです。
これでは兄弟というよりは宿敵モデルと言えるのかもしれません。
さらにラストをカントリー風に変更し爪先をプレーントウに変更した「ヴァイキング」もあります。
ウィリアムは英国の歴史が詰まった靴であることも魅力の一つです。
今ではウィリアム以外は廃盤となっています。
ウィリアムのコーディネート
ウィリアムといえばバッファローレザーが代名詞です。
手入れを続け履き馴染んだ後の雰囲気と重厚さは何ともいえません。
少しカジュアルかもしれませんがスーツにもジャケットにも何も気にせずウィリアムを履くだけでお洒落に決まります。
色は黒、こげ茶、明るい茶、どれも有名ですが、個人的にはバッファローには明るめの茶色がおすすめです。
ソールは基本ダブルソールですが、複数のラバーも標準で組み合わされておりバリエーションがあります。
明るい茶色のバッファローにカントリー系コマンド系ソールだとカジュアルすぎて合わせる服装の幅が狭まる気もしますがトリッカーズの様に合わせるのも良いかもしれません。
ネイビーバッファローも磨くと光り方が宝石の様で上品さがありました。
ボックスカーフのウィリアムはがらりと印象が変わります。
甲を覆う革の面積が広いのでジョンロブのエレガントなカーフの印象が強まります。
ボックスカーフでは黒とシルバーバックルの組み合わせがおすすめです。
艶っぽいが華美で無い、力強さも感じられてスーツの威厳が増す様な印象があります。
もしくはミュージアムカーフの茶色で艶っぽさをより強調させるのも悪くはありません。ミディアムグレイのスーツやジャケットスタイルに高級感が加わります。
ウィリアムというとカジュアルな先入観がありますが、ミュージアムカーフとすることでプレステージラインのダブルモンクの様なエレガントな雰囲気に変わります。
かつてゴールドだったバックルがシルバーになったことは良い変更点だったと思います。
私のウィリアム
私はブラックミスティカーフ、バッファローのダークブラウンとライトブラウン、を持っています。
かつてはブラックカーフとパリジャンブラウンミュージアムカーフのブーツも持っていました。
今はネイビーバッファローを追加してこげ茶を手放そうかと思っています。
ジョンロブのネイビーバッファローは育つとかなりの色気と重厚感もあり何足も欲しくなります。どのモデルであってもおすすめの色と素材です。
新旧ウィリアムの比較
旧 ウイリアム
かつて90年代前半までジョンロブの市販品はクロケット&ジョーンズが製造していました。
と言っても一般的なC&Jとは比較にならないクオリティです。
古き良き時代の革靴という独特の雰囲気があります。
革は厚いのにハムの様なしなやかで柔らかい感触がありシボは深い、ライニングの質は極上、底付けも丁寧です。
私の今持っているものはバックルが四角いタイプで新旧同じですがピン先側が丸くなったDカン風のものやソールのコバに目付けがされているものもあります。
旧ウィリアムは細身で真っ直ぐなラストです。中足部の内外の絞りが大きいことや釣り込みの立体感はC&J製全般の特徴です。
唯一、C&J製の難点はヒールカップの立体感が今ひとつであることです。
履き口の上部アキレス腱部位のすぼまりが弱いことで踵のフィット感が弱いです。
もしかしたらアキレス腱よりも下、踵の骨位置がC&Jの想定している履き口の位置なのかもしれません。
私はそこまで踵が大きくありませんので、履き口上部の僅かなゆとりが足に馴染もうと力が加わっている様な気がします。
そのせいかC&J製は着用中に履き口付近にクラックができやすいです。
C&J製がは30年近くも前のことですし特に革が厚手の履き口付近は過剰なまでに油分を補給し柔らかく足に馴染む状態にしておくことが長持ちさせる秘訣かもしれません。
木靴の様なソールの硬さもC&J製の特徴で、これはかなり履きこまないと柔らかくなってきません。
現行 ウィリアム
ウィリアム専用の9795ラストが魅力を倍増させます。
踵は丸く、上部に向かってくびれた履き口は綺麗に足の形そのままにすぼまるので踵がゆるいということもありません。
全体的に丸くボリュームがある様に見えますが、この立体的で足裏から手で包み込む様なフィット感と、一見太めに見えますが内振りが強く土踏まず部分でフィットするので緩く感じる様なこともありません。
甲の細いストラップだけで堅牢なダブルソールを固定しますがラストが良いせいかストラップは軽く止めるだけでしっかりと足に付いてきます。
シボの薄いバッファローはノーブルで合わせやすいと思うことにします。
スレに弱いのもちょっと残念な私の現行ウィリアムです。
ソールの比較
ソール裏から見ると現行ウィリアムの内振り具合が分かりやすいです。
ヒールは丸く幅があり大きいです。
旧ウィリアムはヒールの釘の量と間隔が今ではありえない手の込み様ですが、そのせいで滑りやすいです。
アッパー側から見ると釣り込みのカーブや土踏まずのえぐれに特徴がありますが、ソール側から見ると形自体はオーソドックスです。
コバは上下ともはっきりと爪が立っていて出し抜いの糸も太く全体的に立体感があり城壁の様な存在感があります。
さらに古いものはコバに目付けがされている場合もあり迫力が違います。同じ様にカスタムも良いかもしれないと思ったりもします。
アッパーの比較
旧ウィリアムはシボが深く荒々しさがあります。
それでいて磨くと強い光沢が出るのが魅力です。
新ウィリアムはバッファローなのにスレると色がかすれやすいのでクリームは多めに磨いで保護する必要がありました。
シボがあるのに小ジワが目につくのも気になります。
それでも磨くと光やすいのがジョンロブのバッファローの魅力です。
ステッチの比較
古い靴の方がステッチのピッチが細かいです。
でもあまり細かかったりギリギリを縫われたものは苦手です。
その分、負荷がかかるとミシン目の様に切れやすくなるしピッチの細かさが靴自体の耐久性に影響しているとは思えないからです。
縫い合わせも縁ギリギリを縫っているのも古い靴の特徴ですが、これもあまりにギリギリすぎるものだと痛んだ時に革が割れたり切れたりしてきます。
古い靴の方が総合的には良い作りをしていると思いますが、痛めずに長く履いていたのでステッチは程々が好みです。
ツインステッチの幅が新旧で違います。
現行でもフィリップやシティのツインステッチ幅は狭いので力強いウィリアムに合わせたデザインの問題かと思いますが、トウキャップやサイドの合わせ部分のステッチ同士の間隔が新では広まっています。
ライニングの比較
タンの付け根のライニング画像です。
画像からも分かる様に旧はライニングの革質が物凄く良いです。
ステッチは現行だと途中までですが旧品はタンの根元まできっちりと縫ってあります。
ウィリアムの手入れ
バッファローレザーはスレにも強く雨にも強くハードに使用できますが、油分を多めにしておくと少しのスレなら手で擦るだけで消える様になります。
仕上げはカーフもバッファローもサフィールノワール クレムに決まりです。
コロニルシュプリームやサフィールノワール レノベイタークリームでたまに磨くと手軽に汚れも落とせて輝きも保持できるので一石二鳥です。
なかなかしなやかさともっちり感が出ない場合はサフィールノワール ミンクオイルがおすすめです。
まとめ
ウィリアムについて考えれば考えるほど完成されたモデルだなと感じます。
手持ちのダブルモンクにはプレステージラインのチャペルとナセビーもありますが、やはりウィリアムの安定感完成度には負ける様な気がします。
プレステージラインの様ないかにもラグジュアリーな雰囲気はありませんが、ジョンロブですから履くだけで全体的にランクアップした様な気がしますし気軽に合わせられて着用する場面も増えます。
しかしいくらドレッシーではないダブルモンクのウィリアムとはいえジョンロブの雰囲気は太めのデニムやカーゴパンツにはどうにも合わない気がします。
その場合はパラブーツのウィリアムの方が具合が良いのかもしれません。