テロワールを求めて

趣味(靴、旅、道具、バイク等)を通して自問自答し理想の自分を導き出すまでの道すがら。

ビルケンシュトックのメンテナンス 【完全版】

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夏を前に手持ちのビルケンシュトックのサンダルを整理しています。

革靴に比べれば手入れも簡単、せっかくなのでフルメンテナンスでリフレッシュすることにしました。

 

画像はお手入れ後です。

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ビルケンシュトックのメンテナンス道具

ビルケンシュトック、革靴、ブーツ、どれもメンテナンスの基本は同じです。

色々ネットを見るとビルケンシュトックはカジュアル志向の人も多く所有しているためかメンテナンスも手近な道具で代用している場合を見かけます。

私も試して見ましたが明らかに仕上がりに差が出ますのでおすすめできません。

上記の通り、革靴やブーツにも使えますし今後も使うものなのできちんとした道具を揃えた方が良いと思います。

スエードシャンプー

スエードシャンプーはスムースレザー用とは異なります。

中性の洗剤やシャンプーで代用も可能ですがすすぎ残りや風合いの劣化を考えるとやはりおすすめできません。

風合いや汚れ落ちを考えるとスエードシャンプーを準備した方が良いです。

汚れは落ちるので本人は綺麗になったと思うかもしれませんが遠くから見るとどことなくみすぼらしさがあります。

最後にスエードケアアイテムを使うとしても専用シャンプーを使うかどうかで差は出ます。

おすすめはサフィールです。少量で物凄く泡立ち仕上がりの風合いもかなり良いです。

ウォッシュブラシ

スエードシャンプーにはスポンジよりもブラシの方がおすすめです。

柔らかいナイロンブラシも良いですし豚毛ブラシも良いです。

モウブレイの水洗い専用ブラシは泡が飛び散らず力も入れやすいので考えられているなと思うのですが、あまりにも洗いやすいため洗いすぎに注意が必要です。

サフィールのスエードシャンプーならば豚毛ブラシが最初から付いてきます。

ソールブラシ

ビルケンシュトックのソールはゴムかスポンジです。

特にこだわる必要はありませんがアッパーと同じブラシを使ってはいけませんので別途用意する必要があります。

100均でも手頃なものはありそうです。

私はレザーソールにも使えるソール専用ブラシを使っています。

スエードブラシ

水洗い後は毛が固く寝た状態になっているためほぐす必要があります。

普段のスエードのブラッシングにも使いますので値段を気にせず良いものを使った方が良いです。

質が悪いとスエードの毛がはげてきてしまうものや色が褪せて白っぽくなってしまうものがあります。

私は、ジョンロブロンドンの豚毛ブラシと江戸屋のスエードブラシを使っています。

コルク防水コーティング材

使用とともに防水性が落ちてくるビルケンシュトックのコルクのコーティング補強に使います。

昔はビルケンシュトック純正のコーティング材が売っていましたが現在国内では代替品すら手に入りません。

ショップへサンダルを持って行けば無料でコーティングを行ってもらえるはずですし、海外からなら代替品のコルクコーティング剤が手に入ります。

私はそれ以外の汎用性も考えて防水性のあるボンドを使っています。

木工界隈では有名なタイトボンドというものです。

タイトボンドは流動性が高くコルクの隙間にも浸透し硬化も早く耐久性も高いです。

コルクのコーティングとしてだけではなくボンドとしても所有する価値があります。

赤い蓋のタイトボンド オリジナル、緑の蓋のタイトボンドIIIがありますが、赤は耐水性がありませんので注意が必要です。

クレープブラシまたはスエード消しゴム

必要を感じなければ無くても良いと思います。

通常のブラッシングでは取れない表面的な頑固な汚れを吸着するブラシです。

強く擦り過ぎたり一部にだけ使いすぎると風合いが変わってしまいますので注意が必要です。

水洗い後に硬くなったスエードは通常のブラッシングでも丹念に行えば可能ですがクレープブラシを使うと簡単に風合いが戻ります。

洗った後のライナーには効果絶大で、硬くなった表面が柔らかく回復し足形も落とせます。通常のブラシではライナーの風合いを戻すのは結構大変です。

私はサフィールノワールのクレープブラシを使っています。

サフィールノワールは他のブラシについても同様ですが毛の質、さらに持ち手の風合いがその他の市販品とは別格です。

スエードケアアイテム

スエードケアにはスプレーやジェルがありますがどれも起毛専用品です。

防水のためのものと栄養を与えて風合いを回復させるものがありますが、栄養を与えるものを使います。

スプレー式のものが多く、色付きのものもありますが無色がおすすめです。

色付きだからと言って完全に色が戻るわけではありませんし、毛並みの奥と表面の色に差が出来てブラッシングすると毛並みのムラが目立つからです。

洗うときに失敗したり手入れをしなさ過ぎて無色で対応できない最後の手段として色付きを使う程度です。

白っぽく乾燥した風合いは無色のスプレーでも見違えるほどに回復します。

サンダルの場合、ライナーがむき出しでスプレーは使いにくいと思われますがそこまで厳密に気にする必要はありません。

私はサンダルに手を突っ込んでスプレーをかけることもあります。

ビルケンシュトックに関してはコロニル レザージェルの方が使い勝手だけで無く仕上がりも良い気がするのでレザージェルをメインに使っています。

色褪せに特化した色付きの液体がスポンジから滲み出るリキッドというものもありますがこちらはあまりおすすめできません。

リキッドで塗った色は色落ちが激しいこと、金具や切り替えの隙間にリキッドが届かずそのままでは塗布できない、部分的な色ムラに対応できるほど濃く染まるわけではないからです。

防水スプレー

絶対に必要なものではありません。

栄養スプレーでもスエードの撥水性は回復します。

ですが最後に防水スプレーを重ねるとさらに強い防水性が期待できます。

汚れの付着も抑えられて手入れが簡単になるメリットもあります。

他の革靴と兼用もできるので持っていて損はしません。

ビルケンシュトックのサンダルのメンテナンス手順

こちらが今回のメンテナンス対象です。

限定で発売されたフランス人デザイナーとのコラボモデルです。

スエード表面に点々とシミや汚れ、コルクの歪み、ライナーには足形ができて硬くツルツルになっている部位もあります。

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汚れ落とし

まずはブラッシングです。

水洗いの前に取れる汚れは落としておきます。

ビルケンのコルクは水に弱くできるだけ洗う時間は短い方が好ましいです。

こちらは国内で購入できないジョンロブ ロンドンのブラシです。

一般的な市販のブラシより豚毛が硬く密度が高く毛長は長く、持ち手は超高級なマホガニーでできています。

ブラシとしての性能も高いです。

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ソールの汚れ落としと水洗い

ソール専用のブラシは硬い毛でできています。

元々は水洗い用ではありませんが水洗い時にも使用しています。

ビルケンシュトックの場合、ソールを先に洗ってからアッパーを洗うことをおすすめします。

コルクが濡れる時間が短くなるし汚れている方から洗った方が良いという理由でもあります。

どうせ使えばソールは汚れるので軽くで良いと思います。

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水洗い

ビルケンシュトックが他の靴と違って注意が必要なのはミッドソールのコルクがむき出しであることです。

コルクは防水コーティングがされていますが水に弱くできるだけ濡らさずに手早く洗う必要があります。

 

私は平たくて洗いやすいライナーから洗います。

ライナーの黒ずんだ足形はほぼ汗です。

元は毛羽立っていたスエードのライナー表面が汗と体重で圧縮されて硬くなり色が濃くなってしまっています。

水がライナーに浸透してふやけた後、シャンプーとブラッシング、タオルでの拭き取りによって汗や汚れが流れ落ちスエードの毛羽が立つことで風合いが戻っていきます。

スエードシャンプーをいきなり付けるのでは無く、ライナーを濡らしてブラッシングして馴染ませてからスエードシャンプーを使うと泡立ちやすく汚れも落ちやすいです。

コルク層は水に弱いので手早く洗います。

水に濡らしすぎるよりは乾燥させてから二度洗いの方が安心です。

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アッパーもスエードシャンプーで洗います。

水ジミや色ムラもかなり綺麗になります。

洗っている最中に汚れが落ちていることは実感しづらいですがタオルで拭き取っていると汚れがタオルに移ってインソールが綺麗になることを実感できます。

そのため水洗い直後のタオルでの水切りが重要です。

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乾燥

乾燥で注意するのは直射日光と高温を避けることです。

革の水洗いで最も大きな失敗は乾燥にあると思います。

高温だと革が収縮して型崩れをおこしたりスエードの繊維が解けて毛抜けが止まらなくなることもあります。

風通しが良く高温になりすぎず直射日光の当たらない乾燥した場所が望ましいです。

仮に雨が降っている日でも、新聞やタオルで出来るだけ水を切り、室内で送風機を当て続ければ問題ないはずです。

手間は増えますが適切な手順を踏めば過度に恐れる必要もありません。

コルクのコーティング

見えてる範囲のコルクにコーティング剤を塗ります。

私は防水性のあるタイトボンドIIIを塗っています。

タイトボンドは塗り始めは適度な粘性がありますが時間が経つとコルクの隙間へも浸透していく流動性があります。

また硬化時間が早いのも特徴です。

サイドのコルクからストラップが剥がれてしまってもタイトボンドで接着可能です。

タイトボンド オリジナルはボトルが赤、タイトボンドIIIは緑です。

オリジナルの方が硬くしあがりますが水に弱く、IIIは防水性があるのでタイトボンドIIIを使います。

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本体先端はハケがわりにもなりますがビルケンのサンダルに使うには液が出過ぎてしまい、乾くまでの間に垂れてしまいますので薄く伸ばします。

ハケががなければ指でも問題ありません。

乾くまでは水で簡単に拭き取れますので不要にはみ出した部分も水で拭き取ります。

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塗りたては白いですが乾燥後は無色になります。

乾燥後は若干柔らかく爪を立てると少しへこみますが時間の経過で戻ります。

タイトボンドオリジナル(赤)は乾くと硬くなり崩壊しかかったコルクもしっかりと元の形状に戻すことができますが水への弱さが致命的です。

 

画像左はタイトボンドオリジナル、右がタイトボンドIIIが水に濡れた状態です。

オリジナルは水に濡れるとすぐに白くなってベタベタと溶けてきます。

オリジナルでしっかり固めて、防水のためにIIIを薄く塗って問題なければそれが一番良さそうです。

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ベルトの剥がれ接着

ベルトの接着にもタイトボンドIIIを使います。

剥がれていても問題無いと思う方もいるかもしれませんが、コルクに接着されているベルト側面によってベルト自体が立体的に保持されており歩いた時のベルトのフィット感やフットベッドの足への追従性に違いが生じます。

 

ビルケンシュトックのストラップは足の甲の厚みを意識して思いのほか立体的に形成されています。

フットベッドも部位ごとに厚みが異なり、接着剤を塗布しても面で圧着するのはなかなか難しいです。

紐で縛ったこともありましたが強く縛ることが難しく上手くいく時と失敗することがありました。

そこで思いついたのがクリップで固定することです。

接着直後はスエード面にへこみができますがブラッシングをすれば元どおりになりました。

強すぎるクリップはサイドのコルク面やアッパーにへこみができる可能性があるので注意してください。洗濯バサミでも良いかもしれません。

 

もし上手くいかない場合は素直に専門店で接着してもらうことをおすすめします。

剥がれたまま着用するとフットベッドに無駄な負荷がかかって痛みを早めてしまいますし履き心地もよくありません。

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水洗い後のブラッシング

水洗いをすることで油分が抜けて毛の繊維が硬くなり毛が寝た状態になります。

軽くブラッシングしてスエードケア用品の栄養が浸透しやすくしてから補給します。

水洗いで油分が抜けたスエードに強くブラッシングしすぎると毛がポロポロと抜けてしまうこともあるので軽く行う程度です。

 

ライナーは通常のブラッシングでは戻りにくいと思いますのでクレープブラシやスエード消しゴムでこすります。

硬くなったライナーの風合いや足形が落ちてこの時点で見違えた様に回復するはずです。

 

左足が水洗い乾燥後、右足がクレープブラシでブラッシングした後の画像です。

足形は少し薄くなった程度ですが柔らかく復活した風合いは段違いです。

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栄養補給

スエードケアスプレーやレザージェルで栄養を補給します。

塗布して乾燥後にブラッシングすると毛の艶や風合いが回復するはずです。

白く乾燥した風合いも戻りしっとりとした美しい毛並みになります。

汚れやシミも落ちるか目立たなくなっているはずです。

 

画像左が水洗い含め全ての手入れ前、右が全ての手入れ後の画像です。

手入れ後は転々とした汚れが落ちてカサついたスエードの風合いが整っています。

ライニングの汚れも落ちています。

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最後に今後のことを考えて防水スプレーも塗布します。

シミになる様な汚れが付きにくく水ジミもできにくくなります。 

メンテナンス完了

メンテナンス前がこちらです。

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メンテナンス後がこちらになります。

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柔らかいスエードなので気にすることではありませんが型崩れも何となく戻った様な気がします。

一度に洗いすぎるとコルクやライナー自体の痛みにもつながります。実際にメーカーにライナークリーニングを依頼する場合は二、三度行なった後は新品のライナーに交換することを勧めているくらいです。

コルクの修理を行うくらいなら買い換えた方が良いでしょう。

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ビルケンに限らず革靴のメンテナンスのほとんどは自宅で行えます。

自分でメンテナンスをすることで愛着も増し、靴の状態を自分で認識できる様にもなるため長く使える様にもなります。

 

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