テロワールを求めて

趣味(靴、旅、道具、バイク等)を通して自問自答し理想の自分を導き出すまでの道すがら。

DIY ビルケンシュトック スムースレザーが割れてきたのでスエードに加工してみた

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以前から記載している様にビルケンシュトックのスムースレザーはあまりおすすめできる素材ではありません。

なぜなら経年劣化で表面が剥がれて割れてくるからです。

タンニンなめしの染料染めとは異なり、靴を使用していなくても手入れをしていても時間が経過すると割れてきます。

今回はあまり使っていないのにアッパーが割れているビルケンシュトックのボストンを蘇らせるために表面の塗装を全て剥がしてみました。

 症状

画像をご覧の様にほとんど使っていないにも関わらず革が割れて、と言うよりも剥がれている様な部位すらもあります。

これはどう言うことかというと染料に漬け込んで染めたのではなく、表面に塗料を塗った塗装によるものだからです。

アッパーに密着していた顔料が時間の経過とともに粘着力を無くし剥がれてきたのです。

なんとなく酸っぱい接着成分が劣化して酸化した様な臭いもします。

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顔料と染料の違い

スムースレザーのビルケンが全てだめだと言うわけでもないです。

顔料無しと言うのは量産品のビルケンには難しいことかもしれませんが、顔料が薄いモデルならあります。

あのジョンロブですらベージュの様な薄い色には顔料を僅かに使って仕上げることもありますので全てが悪と言うわけでもありません。

スムースレザーであれば革を見て顔料の薄いモデルを選ぶと長く使うことができ、それらは履き込むと味が出てくるので大切に長く使うこともできます。

 

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割れたビルケン ボストンと割れていない編み込みモンクストラップのアントワープです。

比較するとボストンは均一でムラの一切無いブラウンです。

アントワープは色ムラがありますが透明感があり爪先に光沢感があるのが分かるかと思います。

これが顔料かどうかを見極める方法です。

染料は擦れたり履きこむことで色抜けが起こりやすいのですが、クリームを塗ると油分が皮革に浸透し革の色には奥行きができてきます。

さらにクリームのワックス分がブラッシングで磨かれ光沢が増していくのです。

顔料は塗料を革表面に乗せているため風合いは一定で、甲のシワはミミズ腫れの様に太く醜くなってきます。

よく見るとアントワープの方は革がしなやかで細かいシワができています。 

 

ビルケンで私のおすすめ素材はヌバックまたはオイルドレザー、次にスエードです。

スエードは馴染むと革が柔らかくペラペラになっていくのでそれが好みかどうかにもよります。

古いモデルのスエードはコシがあり革が厚く繊維も詰まって毛羽が細かいのですが、最近のスエードの中には繊維がほどけそうなヤワさがあり毛羽がバサバサしていたり靴として頼りないコシの無さがあります。

手で撫でるだけで毛が抜ける様な粗悪なスエードが純正品でも混じっていますので、同じモデルであってもよく見比べて確認することが大切です。

高級なスエードはマリモやコケの様に毛羽が密で短く立っています。

作業に必要な道具

スクレーパー

顔料をこそぎ落とすために端が薄くなったヘラを使います。

ヤスリだけで顔料を剥がすのは大変ですが、スクレーパーでこそぎ落としていくと簡単に剥がれます。

耐水性紙ヤスリ

できれば耐水性のある紙ヤスリを使った方が目詰まりがせず効率が良いです。

塗膜を剥がした表面を馴らして残った塗膜や接着成分を落とすために使います。

DIY ビルケンシュトックのカスタム作業開始

塗膜を剥がす

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スクレーパーを使うと顔料が面で落ちていくのでかなり楽に作業が進みます。

ヤスリしかない場合は顔料がかなり厚いため削るのが大変です。

バックルやリベットの周りもヤスリだと作業が大変です。

 

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剥がし終わった直後です。ムラがあるのは接着成分が顔料と一緒に剥がれた部分と皮革側に残った部分です。

スクレーパーには接着成分がネチョネチョと薄くこびりついていました。

一度、水洗いして細かい顔料カスを洗い流します。

アッパー表面を削って風合いを整える

接着成分の残りをできるだけ落として表面を均質にするためにヤスリがけを行います。

粘着力はそこまでではなくガムテープの粘着痕をさらに弱めた様な感覚ですが、繊維の奥まで浸透して頑固な部位もあります。

粘着物で目がつまらない様にかなり粗めのものを使います。

元の革質が良いのか粗めのヤスリを使っても均質な風合いになり想像よりも綺麗になりました。

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削りカスを落とすためにスエードブラシでブラッシング、その後水洗いし再びブラッシングします。

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完成

想像よりも毛羽が整っており綺麗な状態にはなりましたが、完全には粘着物を落とせずところどころオイルスエードの様な風合いになってしまいました。

当初はワックスを塗って磨いたオイルドヌバックの様な光沢仕様にするつもりでしたが、この風合いも悪くはなくしばらく使ってみることにしました。

表面にところどころあるムラ感がラウアウトレザーのワークブツーツの様です。

ビルケンによくある綺麗なスエードはカントリー風なところがありますが、それよりもラフな雰囲気でジーンズに似合いそうです。

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