テロワールを求めて

趣味(靴、旅、道具、バイク等)を通して自問自答し理想の自分を導き出すまでの道すがら。

伝説のボノーラ製のジョンロブ フィリップとマッタを比較 【JOHN LOBB PHILIP MATTA 】

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かつてはビスポーク専門であったジョンロブがエルメスに買収されジョンロブ パリができあがった当初、レディメイドの製造は外部に委託していました。

通常モデルはクロケット&ジョーンズ(C&J)が担当していましたが素材や管理はジョンロブ パリによって行われておりその品質は超一流、現行より格段に良いものでした。

その後、エドワードグリーン(EG)が一部担当していた靴もありましたが、基本技術は高くとも廃業寸前のEGは内部のゴタゴタが見え隠れする出来でした。

そして、通常モデルとは別にハイグレードな靴の製造を僅かな時期に担当していたのがイタリアのボノーラでした。

これがプレステージラインの始まりとなったのです。 

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 ジョンロブ パリとボノーラ

ジョンロブ が目指したさらなるハイグレード、ラグジュアリー、わかりやすいアイコンがシームレスヒール、ハンドソーンウェルト製法だったのです。

今では一目でジョンロブのプレステージラインと分かる特徴的なディテールです。

しかしジョンロブの要求に答えるクオリティで安定的に製造できるファクトリーが英国には存在せず見つけたのがイタリアのボノーラでした。

ボノーラはジョンロブから依頼される以前よりシームレスヒール、ハンドソーンウェルト製法を使用しており週に6足程度しか製造出来ない程のこだわりであったと言います。

そのボノーラも一時倒産し今では当時のような手間のかかる製造は行なっておらず全くの別物、倒産前のボノーラは旧ボノーラと呼ばれ「幻の靴」としてコレクターアイテム化しています。

旧ボノーラも大変に良い靴でメディア次第では再び話題になってもおかしくない靴です。

実際に、これまで見向きもされなかった東欧靴がにわかに注目を浴び、現在自社生産を行なっていないエドワードメイヤーの自社生産品はプレミア価格で取引され、現行ではVASSがエドワードグリーン以上の扱いを受けています。

ボノーラ製ジョンロブの特徴

上記の通り、通常モデルにはないシームレスヒール、ハンドソーンウェルト製法(ウェストはマッケイとのハイブリッド)が特徴です。

それ以外にも旧ボノーラの基本技術の高さによりステッチや吊り込み等全てが格上です。

革はペニョペニョとした感触でしなり皆無の柔らかさ、しかし通常以上にガッチリとした芯が広い面積に入っておりシューレースを優しく締めただけで足が靴に固定されているかの様な履き心地です。

ソールは木靴の様に感じる程、固い革でできておりかなりの耐久性があり最初は滑りやすいです。

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シームレスヒール

綺麗なシームレスヒールとヒールカップです。

シームレスヒール自体はそこまで大変な技術では無いと聞きます。

もし優れているならば英国の偉大なビスポークシューズは全てシームレスヒールを取り入れているはずです。

私が思うにジョンロブパリが他の英国靴とは違うアピールポイントとして差別化するためであり、イタリアにはシームレスヒールの文化があった、エルメスの美的感覚的にそれは美しいとされて取り入れられたのだと思います。

ジョンロブパリはいつしか一枚側、縫い目の排除を靴の究極と考える様になりました。

ですから私は個人的にはジョンロブパリとボノーラ以外のシームレスヒール自体を崇拝する気もないし、単にシームレスヒール自体に所有欲を満たしている様な意見はメディアの受け売り、踊らされているだけだと思っています。

大切なのはヒールカップの作りの良さ、当然ボノーラ製ジョンロブは素晴らしいヒールのフィット感です。

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ヒールカップと土踏まず

ヒールカップの芯が土踏まずまで続いています。

これはジョンロブ パリ ビスポークでは見たことがありますが、他のレディメイドブランドで行われているのを見たことがありません。

通常は土踏まずはいくら綺麗に吊り込まれていようと万人に向けたレディメイドでは履いた本人が馴染ませて足にフィットさせていく部位かと思います。

そこにボノーラ製の場合はガッチリと固い芯が入っています。

他では味わえない独特の履き心地です。

底付け

ソールは土踏まずは返りの良いマッケイ製法、接地面はハンドソーンウェルト製法と言う製法で作られています。

マッケイ部分はウェルトが存在しませんのでどの様にでも形成できるベヴェルドウエストが独特の意匠となっています。

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ジョンロブ フィリップ ボノーラ製

 

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シューレース部の割合が高く、ノーズやトウキャップは短め、どことなくイタリアの田舎な雰囲気を感じます。

同じ究極でもEG旧トップドロワーの様な英国的な押し出し感はありません。

今風のタイトで強いテーパードのパンツには合いにくいかもしれませんが私の好みには合っています。

現代の7000ラストは靴自体は中庸に見えるのですが洋服と合わせた時の美しさと全てが格上げされたかの様なバランスはさすがです。

英国メーカーは靴自体は美しいのですが服装と合わせた時に浮いてしまいどうにも馴染んでいない気がするのです。

ジョンロブ マッタ ボノーラ製

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フィリップと違い甲全体が一枚の革なので木型の美しさや吊り込みの美しさに目が行きます。

ノーズは長く甲の立ち上がりが鋭く土踏まずの立体感がとても美しいです。

甲部が大きな一枚革、ストラップからヒール周りが一枚革、シンプルなので二枚の革のみで作られていることが強調されます。

ストラップには穴が一つしか空いていないこともポイントで販売時にはストラップ穴が空いていない状態なのです。

フィリップよりもマッタの方がボノーラ製である特別感を強く感じられます。

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