帰ってきたジョンロブ、また歩き出そうの巻
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釘の様なものがはみ出していたジョンロブの修理が完了しました。
状況の説明をお願いしたところ、ヒールを固定するために靴の内側から打っている釘が曲がってしまいそれがヒール脇から出てきてしまったとのこと。
つまり、不良品であるということで責任はジョンロブ側にあるということです。
しかし購入先が国内ではないことから費用は負担できないと言う。
また、ヒールのゴムだけ(一世代前のJLを象ったジョンロブオリジナルのヒール)を残したいというこちらの要望を飲んで本来は行わない手間のかかる修理を格安で行ったと言うことで相殺したいとのこと。
言うなればリコールの修理費用を購入者に負担しろと言うことである。
最初から想定していた回答ではあったが、たかが2000円の負担で顧客の気分を害すると言うのはいかにも日本の企業と言う感じで高級ブランドのすることかなあと思います。
この判断はいかにも日本の企業だなあと言う雰囲気の役職付きの人が行ったのでしょうね。
そして出来上がったラグジュアリーブランド様の修理はとんでもない出来の悪さであった……。
ヒールがガタガタです。
グラインダーの目が荒く修理が雑であるために美しく滑らかだったはずのヒールはガタガタで、しかも削りすぎて前方の幅が5mmほど小さくなっています。
勝手にアンバランスなピッチドヒールにされていました(泣)。
確認ですが、これは鍵屋併設ミスターミニット(の方が良いかも?)ではなくジョンロブ正規店の修理です。
さらにヒールの顎も削られて不恰好な形に(泣)。
下記画像の上は何も修理を行っていないチャペルの顎、下段が今回修理から帰ってきたナセビーです(ヒールの高さが違うのは縮尺の違いです)。
ヒールの前側を見ると明らかにチャペルの方が精悍、荘厳、美しいと感じられるはずです。
なぜこんなことが起こるかと言うと、ヒールを取り付けた際に靴に対して垂直に顎を削ると地面に置いた時には顎が開いて見えてしまうのです。
ですからヒールブロックは底面を爪先側に倒した様に削り平行四辺形になるようにしなければならないのです。
推測するに日本の靴学校では教えていない場合もあるのでしょう。
大手高級デパートの靴売り場に数多く併設されている某チェーン店で以前同じ目にあったことがありますが、指摘しても全く悪びれる訳もなくふてくされていました。
修理の工程だけを学んだところで観察力、審美眼の無い人間は結局本当の職人にはなれない。自称職人です。
イギリスやフランスの靴では格調高いほど、ビスポークであればさらに顎がとんがっています。
雑誌やメディアではシームレスヒール、フィドルバック、ベベルドウェストと言ったディテールは宣伝文句として分かりやすく紹介されますが、全体の雰囲気やこの様な不確かなものはあまり書かれていません。
ライターや商業ブロガーも宣伝文句ばかり聞きかじって最もらしく語るが実際には経験が少なく感じとることもできていないのではと思うこともあります。
イギリス靴には強く見られる傾向ですが既製のフランス履、イタリア靴は顎が開き気味のこともあります。
ですがフォスターアンドサンやジョージクレバリーはもちろんですが、ジョンロブ、ベルルッティ、コルテ、オーベルシーはフランスでありながら顎はしっかりと閉じておりビスポークであればさらにはっきりと前側に傾いておりますので、美しい靴にとっては国籍関係なく重要な要素だと私は思います。
ヒールと土踏まずのウェルトの間に段差をつけることもビスポークならではの意匠ですが、これらは技術としてではなく代々経験によって受け継がれてきたものなのでしょうか?
これを美しいと感じることが正解はわかりませんが、これが正に靴のテロワールであると言う意見ははっきりとしています。
当然、再修理に出したのは言うまでもありません。
今度は綺麗に出来てきましたが小さく削られたヒール前方の幅は直りようがありません。
信頼できるお店を見つけることは何事においても大切で難しいことですね。