テロワールを求めて

趣味(靴、旅、道具、バイク等)を通して自問自答し理想の自分を導き出すまでの道すがら。

ミンクオイルは素晴らしい 〜ただしサフィールノワールに限る〜

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革靴ブームが続き数十年、革靴各社の違いや歴史の話題から革靴の手入れへと関心は移っていき、その試行錯誤もある程度終わった後に参入して来たのが今の新世代だと思います。

そのブームの始まりから今にいたるまでずっとイマイチな役立たずとして存在し続けている道具がミンクオイルではないでしょうか。

私も革好きになってある程度長くなりましたがふと思い出すことがあります。

ミンクオイルとは一体なんだったのだろうかと。

そんな淡い思い出が、今色鮮やかに塗り替えられる出来事がありました。

サフィールノワール ミンクオイルと出会ったのです。

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ミンクオイルと日本

今から30年くらい前のことです。

靴好きでも何でもない一般家庭にもある靴クリームといえばスポンジから液体が出てくるリキッドかミンクオイルでした。だいたいはコロンブス製でしょう。

誰もが最初に手に取り、しかし手にとってはいけない品として今は紹介されることも多いです。

90年代半ばにアメリカのワークブーツブームがきてミンクオイルも各ブーツブランドのものや専用品が多数販売される様になりました。

コロンブス製よりも良いわけではありませんが同じブランドで揃えたい、本場アメリカ物を使いたい、等々いくつものオイルに手を出すことになるのは私だけではなかったはずです。

ミンクオイルの悪評

ワークブーツブームによってブーツのメンテナンスといえばミンクオイルの図が完成しました。

ところがこのミンクオイルを塗ると皮が色濃くシミになったりシューレースの根元や甲シワが黒ずんだり、革の縫い目やフチにはダマになった黒い粘性のゴミが付く、それでいて皮が潤っている感触は感じられず、かといって塗りすぎるとネチョネチョしてそうな風合いになると散々でした。

しかもこうなると洗っても落とせません。靴用石鹸と言うものはまだメジャーではありませんでした。

こうしてミンクオイルは"百害あって一利なし"との結論になり、今では様々なケア用品が出てきたことでミンクオイルは使われることも語られることもなくなっていきました。

その時の評価は今でも変わっておらずこれがミンクオイルの結論とも言える現状です。

 

ミンクオイルの代替商品について

だいたい25年くらい前のことです。

ある日、ラナバーなるアイテムがどこからともなく日本へやってきた。

店舗で実演なんかもやっていて手持ちのレザーアイテムをその場でケアしてくれます。

これまでのミンクオイルとは違う!明らかに良い!となりその後2つは消費しました。

しかしそれだけ使えば感覚も繊細になります。特段不足も無かったのだが塗り始めの美しいツヤは持続しないし何と無く皮が軋む様な感触がある。

この軋む感触がどうしても気に入らないのです。

次に発売されたのがマスタングペーストと言うものです。

これまで害しか無いと結論付けられて放置されてきたミンクオイルに対して本当に望むものはこれだと言う様なケア用品として登場しました。

これも数個は使い切りさらに純度の高い液状のものも購入しました。

マスタングペーストは浸透性抜群で革も柔らかくなりそして靴は黒ずんで汚くはならなかったと思います。

しかし納得行かない点が一つありました。

革は柔らかくなるしカサつきも回復する、けれどひび割れそうな革や痛んだ革は食い止めることはできず、むしろポロポロと崩れていってしまう。

さすがに革も痛んでいるわけだしそう言うもんだと諦めていました。

そして結局浸透性抜群のオイルはオイルドレザー以外には不要なものなのだと私は思う様になったのです。

 

サフィールノワール ミンクオイル

サフィールノワールと出会い、感動しながらも度々浮気もしましたが結局超えるものはなく完全に信じきる状態になり私の気苦労も減りました。

クリームとワックスは当然、多数あるデリケートクリームも全て揃える状態になりました。

その頃、ノワールにはダビンミンクオイルと呼ばれるオイルがブーツや登山靴用途に発売されていましたがブーツ用には心酔アイテムを見つけておりダビンには興味がありませんでした。

しかし新発売になったミンクオイルはドレスシューズ用と同じ四角いビンに入って登場したのです。

数ヶ月悩んだ末、悩む時間が無駄だと思い購入に踏み切りました。

他の無色クリームとの比較はまた別で行うとして今回はミンクオイルに焦点を当ててみます。

サフィールノワール ミンクオイルの特徴

思うにUS製品やコロンブスはミンクオイルと言いつつ鉱物油でした。

マスタングペーストはホースオイルとのことです。

サフィールノワールは天然の良質なミンクオイルを使用している様です。

 

まずノワール全ての特徴ですが香りが良いです。

しかし他のノワールとも違う香りです。

触感は硬いです。

上記オイルはペースト状ですくえるのですがノワールは硬くてすくえません。

指でくるくるとなぞっていると体温で少し溶けたオイルが指に薄く膜を貼る感じで付着します。

それを靴へ塗るのですが手に取った段階で薄いため塗りこむ様な動作は不要です。

靴の表面をなぞる様に撫でるので、一箇所に浸透しすぎる様なことはありません。

この感覚もこれまでのオイルとは違いました。

最初は塗れているのか?量は少なすぎないか?と感じるのですが数分経つと革の内側まで浸透している様な見事なしなやかさが出てきます。

これは革の柔らかが復活したのとは違います。それ以上のしなやかさを感じるのです。

柔らかさと言うよりしなやかと言う感覚、革の表面が柔らかいのではなく革が一体となってしなる様な感覚です。

日を置くとさらに良い感触になっていきます。

他のノワールの無色クリームとも全く違う雰囲気です。

 

バッグの底や持ち手の角などのボロボロになった革には、塗っ後に何度も擦って馴染ませていくと、見かけはボロボロでも他の部位と馴染んだ風合いになりそれ以上崩れてこないのです。

これは他のどんなオイルやクリームでもありませんでした。

実践結果

こちらは30年程前の靴で、レノマットリムーバーでクリームを落とした後に水洗いをした状態です。

手に入れた時から革の状態が格別良い訳ではなく、表面の革質にもムラがありザラついていたりツヤがあまりにも無さすぎたり部位ごとに風合いがまちまちです。

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ミンクオイル前はコバとの境目を見るとざらついているのが分かると思います。

ミンクオイル後は革質が全体に均質になっています。

ここではまだ磨いていませんがただ磨くだけで光沢も出ています。

オイルを塗って布で磨くだけです。

 

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通常ミンクオイルはツヤを出しませんがノワールは革の内側から本来の風合いが蘇ったかの様なしっとりとしたツヤと黒みが増します。

画像よりも実際は輝いています。

ノワールのミンクオイルは一週間ほど日を置くとさらに状態が良くなっていきますので毎日布とブラシで磨いてクリームはその後です。

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こちらの画像はミンクオイルを塗布した翌日です。

色付きクリームを使っていないのに色褪せた部分にも色が戻っており全体的に奥行きと深みのある色とツヤが蘇りました。

手入れはこれで終わりではありませんがドレスシューズにミンクオイルと言うタブーな組み合わせなのに、知らない人から見ればこれで十分と言えなくもない状態です。

ミンクオイルは"百害あって一利なし"では無いのです。

ただし良質な場合に限るのは化粧品もシューケア用品も同じと言うことです。

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