自分でできる革ジャンメンテナンス 【ベルスタッフのライダースジャケットを洗ってみた】
スポンサーリンク
スポンサーリンク
ベルスタッフ ブラックプリンスのトラッカージャケットを洗うことにしました。
ボックス型で短い着丈、肩のスリーラインがダートトラックレーサーのレーシングスーツに似ています。
現在ベルスタッフは本格バイクラインとシティラインが分かれており、シティラインは着心地と見栄えも良い羊革がメインになっています。
肌理が整ったキラキラとした光沢があり最高にラグジュアリーなレザージャケットではありますが、シワやシボといったラギッドな表情と屈強な鹿革や牛革が着ていて安心感があります。
メインのレザージャケットはパテッド系デザインの牛革、ノーブルで都会的なデザインのものは羊革と使い分けております。
ベルスタッフの中でも過去のアーカイブを参考にしたスペシャルモデルがブラックプリンスと呼ばれるラインです。
皮革にもこだわり旧時代の様な厚手で表情のある特別な革と独特のデザインの限定生産品で今では手に入りません。
素晴らしい革質ですがかなり固く屈強なため今後の痛み具合を心配し、一気に柔らかくするために水洗いすることにしました。
道具の準備
水洗い作業開始
道具が揃っていることを確認し作業を開始します。
水洗いは正しく行えば効果は抜群、失敗すれば全てが台無しにもなりかねません。
また低品質の物に対しては行わない方が良いのはウールもレザーも一緒だと感じます。
埃や汚れを払い状態を整える
水洗いの前に、ブラッシングをして形を整えます。
長く使いっぱなしにしていると肩周りや腰の縫い目に埃が詰まっていたり痛んでいる場合もあります。
ブラッシングで取れない表面的な汚れがあれば水を絞ったタオルで拭きます。
水洗いの前に、強いテンションがかかる縫い糸付近は油分を補っておいた方が良いです。
これから水洗いをするのですが、その前に油分の状態をある程度適切に保ってからの方がトラブルが起こりにくいです。
油分の抜けすぎた革に水を吸わせると乾いたときに収縮が大きく糸の縫い目がミシン目の様に切れてきてしまったりヒビ割れや大きな型崩れを起こす場合があるのです。
洗う前の状態です。革が固くハンガーにまっすぐかけても少し型崩れが起きています。
革も乾燥している部位がかなりあり風合いにもムラがあります。それでも革が割れそうと言う状態ではありませんし普通であれば着て馴染ませていこうと考えるのかもしれません。
水洗い開始
ブラシとスポンジを併用していますが、靴もバッグもジャケットも基本はスポンジの方が調子が良いと感じました。
ブラシだと意識していても擦りすぎたり洗い過ぎてしまうことがありました。
ただしジッパーやフックといった出っ張り付近はブラシの方が作業がしやすいので使い分けます。
直接石鹸をスポンジにとって塗る方法もある様ですが、私は先に泡立てた石鹸水を作る様にしています。
石鹸水を作っておくと広範囲に伸ばしやすく手早く洗うことができます。
石鹸内には革を柔らかくする成分も入っていますが洗浄剤も入っており、洗浄剤が革へ浸透するのは良くないとのことなのでなるべく早くしっかりと洗って手早く水で流しています。
多量の水で石鹸を洗い流してもその後に問題が起こることはありません。
脱水
オススメはできませんが、大雑把に水を流したせいで裏地も濡れてしまったので裏返して20秒だけ脱水します。
濡れたレザージャケットはかなり重くなっているので洗濯槽内で偏らない様にできる限り均等に広げて平らに起きます。
脱水無しでも数日で乾きますので今回は不要だった気がしますが、もし今後の天気が悪い場合は効果があるかもしれません。
グリセリンで保湿
脱水が終わったら今回のキモでもあるグリセリンを塗布します。
グリセリンと水は1対9から3対7くらいの割合で薄めます。
かなり革内部が乾燥していれば3割にしますがだいたいは1、2割で十分です。
グリセリンの割合が多くても良いことはありません。
グリセリンが浸透した後ペタペタとしていれば濃すぎです。水で軽く洗い流しも良いくらいです。
ちょうど良いバランスの場合、塗り始めは革表面でとろみを感じますが擦り込むとベタベタしていない状態です。
それでも乾くともちもちとした吸い付く触感になります。
変化が無い場合はグリセリンが足りていません。
脱水後ではなく乾燥後に塗布しても問題ありません。
乾燥
当たり前ですが、ドライヤーや乾燥機、夏の直射日光で乾かしてはいけません。
革の水洗いで最も気を使うのが乾燥工程です。
風がほどよく吹いて乾燥していると最高なのですがその様な日がいつになるのかはわかりません。
素早く乾かさないと大量にカビが発生してしまうし、水洗い前の状態を見誤ると乾燥後に大変な状態になってしまうこともあります。
最近は浴室乾燥とサーキュレーターを使ったりもしています。
水を吸ったレザージャケットは重いので肩に厚みのあるハンガーにバスタオルを巻いてその上からジャケットをかぶせます。
タオルは革からの水を吸うため色がついてしまう可能性が非常に高いです。
不要になったバスタオルを一枚用意しておくと水洗いのたびに重宝します。
油分で保湿
ジャケットの様な面積の広いものには伸ばしやすい液状のものかすぐに浸透しすぎないオイルが使いやすいです。
今回は油分多めで仕上げに光沢も欲しかったため、サフィールノワール レザーバームローションを使いました。
コッテリとしすぎて塗り始めから吸収されてしまい全てを塗り終わるまで結構な時間がかかってしまいました。
手持ちの中ではコロニルシュプリームも良いかもしれませんが、一度ではあまり奥まで浸透しない気がしたので、厚手の革で乾燥も進んでいた今回はサフィールノワールを選びました。
塗布後は直後と数日後に入念にブラッシングします。
ブラッシングの度にツヤと革の柔らかさが増していきます。
レザージャケットの水洗い完了
この時期なら全ての工程は、3、4日で完了します。
水洗い前に比べて状態が良くなったことが画像からもわかります。
型崩れも戻り、全体の肌理も整った様に感じます。
光沢もこれまで以上、特にキルティングパッドとスリーストライプにはうっとりします。
当初の目論見通り革は極厚の生ハムの様なしっとりとした感触になりました。
レザージャケットは革靴よりも乾きにくいし乾かす場所も選びます。
一年のうち最も適しているのが今、春前の乾燥しつつ風もあるこの時期ではないでしょうか。
型崩れや状態のチェックを考えると年一で水洗いをしても良いのではと思います。
実際、革靴は着用高頻度の物に関しては年一どころか年二は洗っていると思いますが、状態は悪化どころか良くなっています。
どうしてもクリームだけだと油分ムラやシワができてしまいますが、水洗いによってそれらがリセットされます。